日本×ブラジル

  • 結果

日本1ー4ブラジル


数字以上に貫禄を見せ付けられた試合だった。



日本は押されながらも前半に三都主の突破から玉田の良い抜けだしで先制。
何より三都主らしかったし、三都主のパスもよかった。
そのおかげで玉田もシュート前に二度ゴールの位置を確認でき、強烈なシュートを打てた。ブラジル代表GKジーダもお手上げだっただろう。



その時、私が試合を見ていた寮の食堂は歓喜に包まれた。(といっても友人と私の二人だけだが…)
その友人は稲本が好きで、四年前に稲本がやったゴールパフォーマンスを真似たりしていた。




しかし、前半ロスタイム。ロナウジーニョのサイドチェンジをシシーニョがヘッドで折り返す、そしてそこにいたのはフリーのロナウド

中澤があと50㎝ロナウド側によっていたら防げただろう。三都主シシーニョをしっかり見ていたら防げただろう。


中澤、三都主がマークを見失ったのはもちろん失態。
しかし、あれだけボールを左右に振られれば仕方がない。個人のせいではなく振らせてしまったチームに責任がある。
前から問題になっていたが、このチームは押されたらラインを下げてしまい、ボランチもラインに吸収されてしまう悪癖がある。
それをすることでディフェンスラインの前にスペースができてしまうのだ。
この得点もロナウジーニョがそのスペースを生かして、簡単に前を向けたからこうなったのだ。


ラインを下げずに踏ん張るのはジーコの哲学に反する。
「一本のパスで裏を取られるラインディフェンスは、賢い選択ではない」という話だ。
もしかすると強くプレスに行って交わされたら…。
という考えが選手にあったのかもしれない。



しかし、あれだけボールを自在に操れる選手達に簡単に前を向かせてしまっては、後はぎりぎりの所で止める(簡単に言うとGKが止める)か、相手のミスに頼るしかない。実際川口の神セーブがなければどれだけ点を取られていた事か。



そしてキックオフと同時に前半終了。リードのまま前半を終われなかったのは確かに痛い。
チーム全体が少し肩を落とした様に見えた。


一応サッカー経験者なので似たような経験はある。チーム全体がそういう空気になった時は明らかにみんなの動きが悪くなる。
これは仕方がなく、切り替えが必要だ。しかし、分かっていても中々できないのが人間でもある。



あの時間に失点をしてはいけない。
と皆言うが、私は「ラインを下げて守ってきた」このチームの戦術がそうさせたのだと思う。
時間なんか関係ない。あのまま前半が終わっても四失点は必然だったように思う。あの戦い方が通じるのはアジア予選クラスまでだろう。



そして後半。
日本は肩を落としたままのようには見えなく、気持ちの切り替えは出来ていたように見えた。


しかし、ジュニーニョミドルシュートを許し、逆転。
あの無回転ボールは不規則に変化するため、いくら川口でも止めるのは難しい。ああいう無回転ボールを頻繁に蹴れるのはブラジルでもジュニーニョとロベルトカルロスくらいしかいない。

そして、ブラジルではジュニーニョは控えの選手だ。もしブラジルがベストメンバーだったら…と思わざるをえない。


しかし、ここもラインが下がるからジュニーニョがフリーになってしまっていたのが原因。
あれだけミートするボールが蹴れた。という事は、それだけジュニーニョがフリーだった。という事だ。



前半のこの位置は稲本が体を張って止めてくれていた。しかし、遂に防波堤は崩れた。

日本のパスミスもここから目立つようになった。



三点目はジウベルトが抜けだし、ゴール右隅へ正確なシュート。
正直ジウベルトが抜けだした場面はあまり覚えていない。



もちろん抜けだしを許した事にも非はある。しかし、私は抜けだしたジウベルトがシュートを打つ前に、坪井が何故詰めなかったのかが気になった。
彼のスピードなら追い付いたはずだ。



それについて私は三つのパターンを予想する。


1、中にフリーのブラジル選手がいて両方ケアするしかなかった。
2、体力的に走れなかった。
3、ぎりぎりの場面(シュート)まで待ち、スライディングで止めようとした。


多分3だろう。シュートが正面なら川口に任せ、サイドなら自分が滑れば止められる。と考えていたのではないか。
ジウベルトのポジションが一般的にシュートが下手、とされるディフェンダーであることからもそう考えられる。

でなければあそこで選手をフリーにしてシュートを打たせるのは得策ではない。いくらディフェンダーでも、だ。
これについては1と3の状況が合わさった事も考えられるが…。



結局川口の横っ飛びと坪井のスライディングの両方が間に合わない位置にシュートを打たれ、失点。





更にロナウドディフェンダーを背負いながらボールを貰い、振り向きざまにシュート。四点目。

これももラインを下げたのが原因の一員。ロナウドのマーカー(誰か覚えていないが…)があの場面でディフェンスラインと共に位置を下げ、ロナウドに簡単前を向かせた。これが私は不思議でならない。
世界でもトップクラスのFWに対してするディフェンスではない。
「すげーな」と友人が言っていた。確かに振り向き様にあれだけ正確なシュートを早く打つのは凄い。まず今の日本のFWではできない。


しかし、私は世界のストライカーとしてはあれくらい当然だと思う。
問題はその認識を日本が忘れてしまった事だろう。


しっかり詰めてくるディフェンダーを交わしてあのシュートを打たれたら、ロナウドを褒めるしかない。
しかし、私は日本に非があったと考える。だからロナウドを手放しで褒める訳にはいかなかった。



ブラジルに大量得点が入った事で、その後ブラジルは若干引き気味になっていた。
これで日本の得点は更に難しいものとなった。



諦めた友人はソファーでうたた寝を始めた。
私は敗戦濃厚な試合でも走り続ける選手を見て、どうしても希望を捨て切れなかった。
しかし、実際にはこの四年間を思い出しながら、試合をただ見つめる事しかできなかった。